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「世界推理短編傑作集1」感想

今回は創元推理文庫「世界推理短編傑作集1」の感想を書いていく。

8本の短編が収録されていたが、1~8位まで悪いと思った作品から順に感想を書いていく。

普通にネタバレもする。

 

8位 「医師とその妻と時計」アンナ・キャサリン・グリーン

射殺事件の犯人として名乗り出た誰もに尊敬される医師と、彼の無実を信じる妻。

医師は本当に殺人犯なのか?だとすればその動機は何なのか?

といった感じなのだが、読んでいて途中から医師が犯人なのは明らかで、謎の中心は動機になる。

つまりはハウダニットものである。

ミステリに動機で読ませるみたいなところを全く求めていないので、申し訳ないが最下位になった。

謎解き部分もそんなに魅力的に感じなかったし。

 

7位 「安全マッチ」アントン・チェーホフ

チェーホフといえば「かもめ」とかのイメージだったので、まずミステリを書いていたこと自体に驚いた。

形としてはミステリの基本形を使ったパロディといった感じ。

謎を解く過程よりもそこに絡む人間模様で見せていくタイプの作品なので、チェーホフが好きな人にはいいのだろうが、謎解きにこそ価値を見出す私にはあまり響かなかった。

 

6位 「ダブリン事件」バロネス・オルツィ

一応は安楽椅子探偵に位置すると思われる。

あえて出来の悪い偽の遺書を作成するという行為から、途中までの話を180度ひっくり返す論理を導くのは見事。

しかし、語っているのが探偵役である「隅の老人」であるため、真相を前提に語ってしまっていて途中から真相がバレバレなのがもったいない。

  

5位 「盗まれた手紙」エドガー・アラン・ポオ

言わずと知れたミステリの始祖ポオの代表作の一つ。

心理的な盲点を突いた手紙の隠し場所は現代でもミステリの常套手段だが、これほど初期の段階で発見し見事に使っているのは恐るべきことだ。

しかし、現代ではさまざまな発展形が星の数ほど生まれてしまったため、現代の読者からするとひねりがなく陳腐に感じてしまう。

陳腐化するほど使い倒される技術を発明したということが偉大なのは分かるけどね。

  

4位 「人を呪わば」ウィルキー・コリンズ

タイトルからは想像もつかなかった素晴らしいコメディ。

前半はマシュウ・シャーピンの調子の乗りっぷりとアホっぷりにたっぷり笑わせてもらい、後半は前半の中に散りばめられた手掛かりをきれいに回収していくお手並みを楽しませてもらった。

前半の最後にはさながら「読者への挑戦状」といった趣きの一文まで添えられており、なかなかに私好みだった。

惜しむらくは真相が分かりやすすぎたということくらいか。

あれだけアホなマシュウに乗っかったていれば、誰だってヤットマン夫人が怪しいと思うだろう。

 

3位 「赤毛組合」アーサー・コナン・ドイル

メガネの小学生が大好きな作家としても有名なシャーロック・ホームズの登場する作品。

赤毛の男性に簡単な仕事をさせて週給4ポンドを支払うという謎の組合の話が、銀行への窃盗事件へとつながっていく物語の流れは今読んでも素晴らしく面白い。

謎の発端が謎の組合というあたり、日常の謎と言えなくもないような気もする。

ただ一つ疑問なのは、いったいいつホームズはヴィンセント・スポールディングがジョン・クレイだと気づいたのだろう?

 

2位 「レントン館盗難事件」アーサー・モリスン

題名の通りレントン館での盗難事件を扱った作品。

爆裂に私好みだった。

何がいいって、解決の時に探偵のマーチン・ヒューイットが自分の考えたことを順を追ってしっかりと説明してくれるところが素晴らしい。

ロジカルであろうという作者の姿勢が見える。

この本に収録されている作品の中で、ロジカルであろうという姿勢を感じたのは本作を含めて2作のみだった。

惜しむらくは、オウムのトリックにはさすがに無理があるのではという印象があったところだ。

そこまではすごくロジカルだったのに最後の最後にオウムってねぇ。

 

1位 「十三号独房の問題」ジャック・フットレル

一見脱出不可能に思える刑務所の十三号独房から、オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授が脱出するお話。

「思考機械」の異名は前から聞いて知っていたが、その名に恥じない作品だった。

レントン館盗難事件」とともに、ロジカルであろうという姿勢を感じることができた。

脱出の手順もそれに必要な手掛かりも一応はすべて提示してあるため、「論理的な思考能力さえ有効に働かせれば」解答することは不可能ではないだろう。

ただ、ツッコミを入れさせてもらえば、実際に脱出に使われた方法が自信満々な割に運頼みな部分が多かったのは頂けない。

一応フォローとして他の手段もあったように書かれてはいるけれど、他の手段はもっと不確実だから選ばれなかったのではと思うと、ヴァン・ドゥーゼン教授の言葉は言い過ぎではなかろうか。

 

最後に

海外の作品、それも短編となると読んだものなどこれまで片手で数えるほどしか無かったのだが、こうして名作アンソロジーを読んでみるとなかなか面白かった。

もう少し、国内外問わず古典の名作というものにも触れてみようと思ったので、とりあえずは大岡昇平の「事件」を読もうと思う。