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「やがて君になる 佐伯沙弥香について」感想

やがて君になる 佐伯沙弥香について」があまりにも素晴らしかったので本編と絡めながら感想を書いていく。

  

やがて君になる」の外伝小説として

正直マンガの外伝小説を買ったのは初めてだったので他の作品と比較などできないのだが、本編と合わせた時にこれほど違和感の無い作品というのは珍しいのではなかろうか。

これ1本でも十分に面白い作品に仕上がっていた。

あとがきで仲谷鳰先生が書いている通り「あまりにも紛れもない沙弥香」がそこに書かれていたと思う。

描かれるのは佐伯沙弥香の小学生と中学生の時のエピソードだが、中学生のエピソードは本編でも軽く触れられている。

そのためオチはわかっていて、そこに向かって進んでいく沙弥香の変化は何とも切ないし、先輩の態度がよそよそしくなっていくところとかは読んでてつらい。

最後には一時の気の迷いで切り捨てるわけだし、沙弥香の変化を知っている私としてはそんな言葉で切り捨てないでよと思ってしまう。

だからこそ帯にもある「こういう私にしたのは、あなたのくせに。」はヘビー級の重さを伴って突き刺さってくる。

本当に佐伯沙弥香には幸せになってもらいたい。

 

やがて君になる」の副読本として

今作は本編の描写をより理解しやすくするための副読本的な要素も多分に有している。

本編第37話「灯す」において描かれる沙弥香の心情描写は今作を読んでいるといないとでは響き方がかなり変わるだろう。

恋占いの石で反対側まで行った沙弥香が目を開けて最初に見る光景は今作のラストシーンの挿絵を意識したものに間違いないだろうし、京都駅で七海燈子を呼び出そうとする心情を綴る言葉は今作で描かれる想い(「恋」という名前を付けるのに違和感があるというか、いい言葉が当てはまってくれないが、あえて当てはめるならやはり「恋」が一番近いと思う)に対応する。

この描写は今作の中では沙弥香の身には起こっていなかったはずだ。

そこが中学時代と本編での沙弥香の違いをはっきりと示しているのだろう。

そのまま読んでも最高の回である37話「灯す」だが、今作を読んでいると3割増しで輝いて見えるようになる。

まあ、個人的にはその次の第38話「針路」が「やがて君になる」の中でベストの回だと思っているのだが。

というか、「やがて君になる」36~38話はどれも「やがて君になる」全体で五指に入るほどの傑作回でイカれた面白さだ。

天才の仕事としか思えない。

 

最後に

ストーリー系の小説でここまでガツンと来たのは久しぶりだった。

普段はミステリばかり読んでいるのでこういったタイプの面白さにはなかなか出会えないのだが、こういう面白さもやっぱり素晴らしいんだよなと思い知らされた1冊だった。

近いうちに2巻の感想も書く。

幸せになる佐伯沙弥香が見たい。